以下の記事は、小規模個人再生制度が導入されて間がないころのものです。今、読み返すと、今更観があり、リニューアルに際して削除しようかとも思ったのですが、小規模個人再生制度の有用性についてはわかりやすくまとめたつもりですし、今でもそのまま当てはまると思いますので、当面、そのまま掲載しておくこととしました。
悪しからずご了承下さい。
平成13年4月1日から、民事再生法が改正され会社等ではない個人を対象とした民事再生手続制度が施行されました。民事再生手続制度は、一言で言えば多額の債務負担にあえいでいる状況から経済的に立ち直るための法的制度です。民事再生法自体は平成12年4月から施行させていたのですが、それは会社等を対象とすることを想定したもので、個人である債務者が利用するのには実際的でないものでした。そこで一年遅れて個人である債務者が利用するのにふさわしい制度が施行されることになったのです。
従前、個人が多くの負債を債権者から負担することになって、本来、個々の債権者との契約どおりに返済を継続することができなくなった場合に採られる方策としては、全ての債権者に平等の条件で元金の一定割合を一括で支払うので、残りの元利金を免除してほしいとか、支払条件を変えて無理のない形で分割支払をすることの合意を求める任意整理の方法と、自己破産を申し立てる方法とがありました。
任意整理の場合は、基本的には裁判所は中に入らず、債務者と債権者が対等の立場で話し合って合意しなければならないため、債権者が債務者の現況に理解を示さず譲歩をしようとしなかったり、債権者の間で公平に扱わなければならないのにもかかわらず、強硬な債権者に対しては事実上優遇しなければならなくなり、協力的な債権者のみが損をするという不当な結果がもたらされたりする弊害があります。どうしても話が進まないときには裁判所に調停を申し立てて、債権者との合意をまとめるために裁判所の協力を得る方法もありますが、裁判所が間に入っても和解条件を債権者に押し付けることはできませんでした。
また、自己破産を申し立てるということは、乏しいとはいえ自分の保有していた財産は原則として処分しなければならないという建前になっています(実際には自由財産として、処分をする必要のない財産が認められてはいます。)。例えば住宅ローンの支払が難しいだけという場合、返済方法を変更しさえすればよいのに、住宅を手放さなければならなかったりします。それに債権者にとっても、債務者が今後得ることができる収入に期待して融資をした場合もあるのであって、破産のように現在ある資産だけを見て返済能力が全くないと判断されてしまうのは実態に合わないということになります(破産の場合は、破産宣告を受けた後に仕事をして得た収入は、自由に使ってよく債権者への配当に当てる必要はありません。破産においては破産宣告の時点で現に破産者が有していた資産のみが配当に当てられることになります)。
つまり、個人の場合、任意整理と自己破産しか借金地獄から開放される方策がなく、それで十分ではなかったのです。それに次ぐ第三の債務整理の方法が必要と長年言われていたのです。それがようやく制度化されたということで、きわめて画期的なものです。
ここでは個人再生手続きの詳細まではご紹介することはできませんが、罰金等の金額、住宅ローン等の債務額(但し同じ担保権つきの負債であっても、住宅ローン等以外の担保権つき負債については、その担保権を実行したとき債権者が回収可能と見込まれる金額)を除いた負債の合計が3000万円以下の場合で、その債務者が継続的または反復的に収入を得られる見込みがあるときに、この新しい民事再生手続を利用することができます(民事再生法221条1項)。
そして原則として3年以内に、総負債額の2割以上の金額を、各債権者に公平に3ヶ月に1回以上の割合で返済していくという再生計画案を提示して、裁判所で認可された後、再生計画どおり履行できれば、それで目的が達成されるということになります。但しこの再生計画案は破産宣告を受けて債権者に配当されるときよりも多額の金額を支払うことにならなければならないという条件はついています(清算価値保障原則)。