割賦販売法に基づく抗弁の接続

 英会話教室の年間受講料をクレジットカードで支払うことにしたが、授業を受けるまもなく、英会話教室が閉鎖されてしまったときの受講料の取り扱い

 そもそも、これの何が問題なのかわからないかもしれません。授業を受けられなかったんだから、受講料を支払わなくてよいのは明らかとお思いかもしれません。しかしことはそれほど単純ではないのです。

 なぜなら、英会話教室と受講者との間だけであればそれでよいのですが、受講料支払に関してクレジットカード会社が介在しているからです。クレジットカード会社と受講者の間では、金銭の支払をどのように行うかが約束されたにつきるのであって、英会話の講習が提供されるか否かはあくまでも英会話教室の問題でクレジットカード会社の問題ではないため、英会話教室がどうなろうと約束どおり、クレジットカード会社から金銭を支払うよう請求されてもおかしくはないのです。これが法律上は原則なのです。このようにサービス提供事業者に対して主張できる抗弁(契約が履行されていないなどの主張をすること)をカード会社に対しては主張できないという原則を抗弁の切断といいます。
 なお、このことはクレジットカードを利用する場合のみならず、英会話教室で指定された信販会社を介して分割支払いしようとするときも同様です。

 しかしそれでは受講者の立場では納得できないでしょう。何の意味もないお金を払わされるのですから。そこで、消費者保護の見地から、割賦販売法第30条の4第1項、第4項が規定されました。この要件に該当する限りにおいては、クレジットカード会社からの支払請求を拒否することができます(このことを抗弁の接続といいます。)。すなわち2ヶ月以上、3回以上の分割支払の場合で、支払金額が4万円以上であるとき(但しリボルビング方式と呼ばれる方法の分割支払の場合は3万8000円以上)です。
 しかし、一回払いの場合、二回払いの場合などは規定の対象外ですから、やはりクレジットカード会社から英会話教室の閉鎖は関係ないとして請求されたら応じざるを得ないこととなります。法律上の原則に戻ってしまうわけです。