法律相談で悩ましい案件に接した場合の対応について(2)

 2018年年末にパソコンがクラッシュして、ファイルをリカバリーしなければならなくなるなどして、更新が遅れてしまいました。前回の続きです。

 さて法律相談で悩ましい案件に接した場合ですが、基本は「ご希望に沿った解決をすることは困難である」ことを丁寧にご説明し、お力になれないことについて理解を得るように努めます。
 ここで安請け合いをしてしまっては、そのときには依頼者から喜ばれたとしても、すぐに裁判所等でどのように主張立証をすればよいのか手詰まりとなってしまいますし、却って依頼者に不信感を招いてしまうからです。最悪、勝ち目がない案件であるのに、さも勝ち目があるかのように偽って着手金をせしめられたなどと、却って恨まれてしまうこともあり得ます。
 というわけで、ほとんどの場合、結局、ご相談だけで終了とさせていただいております。
 しかしご相談だけで終了とすることができた場合でも、悩ましい問題があります。それは法律相談料をお支払い頂くかどうかです。当事務所では、ご相談だけで終了し、実際に事件のご依頼を受けることにならなかった場合に法律相談料をご負担いただくことにしておりますが、ご相談者にとって、法律相談を受けることで希望が見いだせるどころか、逆に絶望的なお気持ちになられているのです。法律相談料をご請求するのは極めてはばかられる状況なのです。そこで私は、そのときのご相談者のお気持ちのままに委ねることにしております。ご相談者から、「では、ご相談料はどういたしましょうか?」と尋ねられた場合には、法律相談料を3、4割程度、減額したうえで、お支払い頂くことにします。これに対して、ご相談者が何も相談料について申し出がなされないときには、敢えて当方から法律相談のお支払いを促すようなことは致しません。

 しかしお力になれないことをご説明しても、それでも「何とかなるはずです。」と言われることがあります。その場合、まずは「私はあなたのご希望に沿うことはできないけれども、弁護士はいろいろだから力になってもらえる弁護士が他に見つかるかもしれないですよ。ほかにご相談に行かれてはどうでしょうか」と促してみます。ところが、既にいくつかの法律事務所にご相談した後に、ご相談に来られたというケースもあり、その場合どうするか、またより深く悩まされることになります。

 そのような場合、基本的には、ご相談された案件の見通しが全く立たないと分かっていても、その案件についても受任することにします。
 ただ、そのご相談を受けている時の印象からの直感的判断にならざるを得ませんけれども、事件を受任した場合を想定して、「やはり予想通りの結果にしかならずご相談者の期待に応えられなかったときに、ご相談者がどのような反応を示されるであろうか」については慎重に見極めますので、やはり、どんなに押し問答になったとしてもお断りする場合もあります。事件の処理が終わった後に、不愉快な気持ちになるよりも、最初から「冷たい」とか、「殿様商法だ」とか思われる方がまだましだからです。

 私がここでこのように書いているからと言って、かえって「歓迎されない」、「迷惑がかかる」場合もあるなどと、法律相談を受けることを差し控えようなどとお考えになる必要はありません。相談を受けられて初めて、なんとかなる案件であるのか、なんともできない案件であるのか知ることができるわけで、頑張れば解決できる案件であるのに、泣き寝入りするようなことがあっては本末転倒です。皆さんが法律相談を受けに来られる際には、自分独自に判断される必要はございません。
 この点、念のために書き添えておきます。