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「先生のご専門はなんですか?」 |
1 | よくお客様や個人的に始めてお目にかかった人などから尋ねられるご質問に「ご専門は?」というのがあります。 そう尋ねられるたびに、「特に専門などというものはありませんよ。普通の人が日常的に直面することがあるようなトラブル一般を取り扱っています。いわゆる一般民事ですかね。」というようなお答えをするようにしております。しかしこのように答えると、ある程度、もともと弁護士に接した経験の比較的多い方などは「なるほど」という感じで御納得いただける場合も多いのですが、あまり弁護士に接したことがなく、初めて弁護士に相談しようという方などは、自分の抱える問題についての「専門家でもなさそうだし大丈夫なのか」という不安感を顔に浮かべる方も少なくなく、このご質問は本当に答えにくいご質問となっています。 |
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とにかく今回は、日本の平均的な弁護士には、特に決まった専門分野などないということを知ってもらいたいと思います。 |
3 | しかしこれから弁護士の数を増やそうというのが社会の流れです。それというのは弁護士が都市部に集中しており、地方では弁護士が一人もいないような所さえ多いという実情があるからです。つまり、地方においては、まだ村の開業医としての弁護士が不足しているということです。 しかし同時に、都市部においても、同時に弁護士の世界での大学病院に当たる専門分野が明確に固まって、専門的かつ高度なリーガルサービスを提供できる弁護士が少ないとも指摘されているようです。それは確かにそのとおりで、反論することは難しいところです。我々弁護士としても将来を見据えて、どう対応するべきか、まじめに考えなければならない状況に置かれております。 ただ、医療とは異なり、訴訟活動についていうと、開業医では対応できず、専門医でなければならないような高度のリーガルサービスというのが何なのか、何も線引きができておらず、あくまでも気分的なもの、相対的なものでしかないように思っています。 もちろん現在でも、比較的専門性が必要とされる特許や国際的商取引の問題、医療過誤の問題などについては分かるのですが、その他の一般的分野についてまでそのような線引きが可能なのでしょうか? |
4 | これから弁護士の数が飛躍的に増え、競争が激しくなることが予測されますから、特徴を出すために専門分野を固めた方がよいのかと考えないわけでもないのですが、一般の弁護士で対応すべき範囲と、それでは無理と思われる範囲との線引きができない以上は、やはり特別の専門分野を打ち出すのは却って営業戦略上も拙いのかなと思っています。 という次第で、21世紀を迎えても、私はしばらく特に専門分野はありませんと答え続けるつもりでいます。 |
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しかし専門分野は特に打ち出すわけではなくとも「得意分野」というのは、確立していかなければなりませんね。 |